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田中日記 18編 Rock Trip in 比叡・日之影

「聞こえるのは自然と己の呼吸だけ」

目の前には巨大な岩壁、周囲には絶景の山々。耳をすませば、風の音と、静かに響く自分の呼吸だけが存在する。10月10日〜12日の3日間、宮崎県へ外岩ツアーに行ってきました。日常を忘れ、自然と一体となり、岩に挑む。そんな贅沢な時間が待っていました。

1日目:比叡の岩場

まず訪れたのは比叡。高千穂と延岡の間に位置するこのエリアは、周囲を壮大な山々に囲まれ、木々の葉が風に揺れる音が静かに響き渡る、自然豊かな場所です。

この日は、スケールの大きなオレンジ色の岩にテンションが上がりっぱなし!関東ではなかなか見られない色合いとスケール感に、気分はまさに冒険者。挑んだのはデルビヨ/3段(V11)。135度ほどの強傾斜に、ダイナミックに腕を振り上げるムーブが必要な課題。花崗岩特有のザラついたホールドが指皮に突き刺さり、何度も挑むものの、この日は登れず終わってしまいました。

明け方4時に出発して移動の疲れも重なり、この日は夜になるまで別の課題にもトライを続けましたが、1本も完登できないまま終了。しかし、まだ始まったばかり!次の日に期待を胸に抱きつつ、ホテルに戻りました。

2日目:日之影の川沿い

翌朝4時、目覚めた瞬間に感じたのは「指皮、痛い…」。初日のダメージが響いていましたが、今日は日之影。川沿いのエリアで、水の音を聞きながら登れる美しい場所です。

アプローチには川を横断する石渡りや渡渉が必要。まさに冒険気分満点です。そんな中たどり着いたのが、残波/3段(V10-11)。ルーフから始まり、緩傾斜に続く課題で、岩の造形がファクトリーの奥壁を彷彿とさせます。ただ、岩が大きくゴツゴツとしている分、スタミナの消費と、どこを踏むか、重心をどこに置くかに頭を悩まされました。

太陽が真上に昇り、岩が暑くなりすぎて滑り始めたため、途中で休憩。気温の上昇とともに、岩探しの旅へ。まさに気分はワンダラー。地図を片手に、川を渡り、山を登り、未知の岩を探す。数ヶ月前の台風の影響で行けない場所もあり、自然の力の前ではただ身を委ねるしかないことを実感しました。

夕方、再び残波に戻り、日が落ち着いてきた頃に再挑戦。午前中に気づけなかった踏み場を見つけ、横に大きく腕を広げる最難箇所を突破。しかし、体力と時間の限界が来たため、この日はリベンジを決意し、翌日に備えることに。

3日目:最終日のリベンジ

迎えた最終日。フリクションの良い朝のうちにリベンジするため、4時に起床。5時過ぎに駐車場に到着するも、空はまだ暗いまま。数十分車内で待機しながら、心を落ち着け、覇気を蓄えました。

そして、十分なアップとムーブの確認を終えた7時、いざトライ。3度目のチャレンジで最難箇所を突破。終盤のパートで足ブラになりかけた瞬間、心臓が跳ね上がりましたが、ガバホールドをしっかりと掴んで立て直し、上部へと進んでいきました。最後の数手は、落ちることのできない高さ。慎重に、確実にホールドを取り、ついに完登!!自然と雄叫びがこぼれ出ました。

動画:残波/3段(V10-11)

完登後は、時間の許す限りたくさんの課題を触りながら、自然の中でのクライミングの喜びを堪能しました。3日間の苦しい戦いを経て、自然の中で過ごす時間の尊さを改めて感じました。人混みやデジタルな世界から解放され、ただ岩と向き合うことで、心と体がリフレッシュされるこの感覚は、何にも代えがたいものです。

旅の終わり

20時、熊本空港からフライトし、22時に成田空港へ到着。24時頃には板橋へ戻りました。もちろん睡眠は取りましたが、この3日間は本当に濃厚な時間で、クライミング自体も充実していましたが、それ以上に自然の中で過ごすこと、自分自身と向き合う時間の素晴らしさとを感じる旅でした。

クライミングはただのスポーツではなく、心と体を癒し、リフレッシュさせるもの。現代社会では、知らず知らずのうちにストレスを受けていることが多いですよね。人がいない場所で、電波も届かない。焦燥感やタスクに追われる日常を忘れ、ただ目の前の岩と向き合うことで、得られる解放感は格別です。

九州まで行くには少し気合が必要かもしれませんが、奥多摩や山梨、長野なら日帰りでも十分に楽しめます。ぜひ皆さんも、外岩の魅力を感じてみてください!都合が合えばご一緒しましょう!

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