「挑戦の苦悩と、心の温もり」
頑張っても報われないことはある、でもやらないと報われることはない。11月12日〜15日の4日間、岐阜県へ外岩ツアーへ行ってきました。挑戦が辛ければ辛いほど、人や場所が与えてくれる温もりが胸に染みるということを今回の遠征で気付きました。
サポートの紹介
まず初めに、この遠征に不可欠だった方の紹介をします。mojoholds 代表、梅津恒平氏。今シーズンのセットメンバーの1人であり、工房にて林さんの仕事仲間である梅津氏。今年は対面する機会が多くあり、愛称「ウメ兄」も僕も2人ともクライミングと酒が好きという共通点ですっかり仲良くなり、「恵那に登り来るなら家に泊まっていいよー」。そんなんで実現した遠征です。ウメ兄ありがとう!!
1日目、初めまして恵那の岩場
午前7時前の新宿発の高速バスで岐阜へ。11時半頃には降車停の中津川インターへ到着。ウメ兄のお迎えでまずは恵那のお宅へ、その後1人で笠置山へと出発。
ここ1年半ほど、恵那遠征を計画しては雨やスケジュールで断念。実は先月の九州も当初は恵那予定でした。念願叶った最初のエリアは、里エリア。他のエリアより近く、笠置山を上がりきらなくても登れるエリア。登れる時間が少ないときや積雪が心配なときに訪れやすいようです。
やってきたのはオススメされた、オドロシ/4段(V12)。凝灰岩らしいキリッとしたホールドが見える課題です。最初の2手に4段と言われるわけが詰まっている。そのくらい保持がハードで動くどころか、足を離すにも全力でした。日も落ちきり、辺りは真っ暗。完登は出来ませんでしたが、初めての岩で雰囲気と質感を感じて撤退しました。
お宅へ戻るとなんだか賑やかな声が。ウメ兄家族とご飯をご一緒させていただきました。長女ちゃんが作った鯖の竜田揚げ美味しかったです!夜は兄さんとホールドの話をしながらビールで乾杯。そのまま心地よい眠りにつきました。
2日目、挑戦と発見の電波塔エリア
この日は午前中より電波塔エリアです。このエリアは前日訪れた里エリアよりも標高が高く、アプローチに20分ほど山道を登る必要があります。その分、視界が開けた場所に広がる美しい景色に心を奪われました。観光スポットにもなっているこの展望台からの絶景を堪能しました。いよいよクライミング開始。
いよいよクライミング開始。大岩エリアで見つけたのは、イルガ/3段(V10)。これぞルーフというような、どっかぶりの傾斜。面抜けも只者ではなさそうな雰囲気。得意な傾斜ではあるのでルーフ部は早々に攻略、面抜けは未解決となってしまいました。
正午過ぎからはウメ兄合流。2人とも未知の岩場、電波塔尾根エリアへ。急勾配を下降して、トンネル岩に到着。下地整備の跡に開拓者の強い想いが感じられました。いろいろとお触りして最後のセッション課題に選んだのは、ニゲラ/2段(V9)。この岩で一番傾斜の強いルートですが、数年前に岩がさらに傾いたとか。ホールド自体は持ちやすく、傾斜に耐えることが重要なフィジカル勝負でした。集中して取り組み6トライほどで完登。ウメ兄は2トライで完登して、お子さんのお迎えのため先に帰っていきました。僕は日が落ちてからも90分ほどナイトクライミングしてから帰宅。おたふくソースの買い出し頼まれ、この日はたこやきパーティーで締めました。
3日目、猪町エリア散策とベアフット
前日夜中に通り雨に降られてしまいました。日中から岩散策、もし乾いたら登ろうというアクティブレストデイ。
歩いたのは猪町エリア。駐車場よりやや遠くに位置するエリアではりますが、課題数が豊富で、次回以降のため、一度下見しておこうと思いました。気になった岩は、覚えておけるようにトポと一緒に写真を撮って記録しました。歩くこと40分、ヤタノカガミ/4段(V12)とご対面。仰け反っていくラインが美しく、今度狙っていきたいです。
小雨舞う中、同じ岩の別課題であるモスモス/5級(V1)がなんだか気になる。絶対にこの手順じゃないと登れなさそうという、自然なのにシークエンスがしっかりしているジムナスティックな課題でした。マットはもちろん、シューズも持っていなかったので、ベアフット(=裸足)スタイルで挑戦。足指に直に来る痛みと落ちられないという恐怖で、5級ながら本気の呼吸でオンサイトしました。
日の入りが間近な16時前、山の空気が変わったのを感じました。。気温と湿気が下がり、登るためのコンディションになりました。選んだのは前日敗退したイルガ。新しく見つけたムーブが相性よく、解決までもう少しのところでマットも見えないくらいの闇。翌日の天候を信じ18時過ぎに撤退しました。
お泊まり最終日の夜ご飯は、人生初のあんこう鍋。そして夜会は、バランタイン17年とギター弾き語り。畳の上に漂う優雅な香りと甘美な歌声に酔いしれました。
最終日、イルガにて月明かりが照らす敗退の背中
この日も前日夜中に通り雨。この雨ならお昼くらいには乾くだろうよという住民でしか分からない情報は本当に助かりました。
助言の時間に入山。登るには十分な環境でした。
この遠征の集大成という気持ちで取り組んでいましたが、なかなか決めきれないなかウメ兄も到着。行き詰まっている僕に対して、思い切ってムーブを変えてみたらとの提案。時間に制限をかけて修正作業で2日目に諦めたポイントでのヒールフックが上手くいき修正完了。
これからラストスパートというところでアクシデント。マット外、しかも折木のある場所へ左足が落下。足首をぐねって着地した瞬間に激痛が、これはやってしまったと思った。暫く休憩のち、骨折ではないことは確信し捻挫と自己診断。自らを鼓舞して挑戦し続けましたが完登出来ずタイムリミット。月が照らすは歓喜ではなく、後悔でした。
旅を終えて
ケガの方ですが、後日病院にて軽度の捻挫のでした。心配には及びませんのでご安心ください。最近、自分自身に成長を感じられていました。だからこそ、ムーブを見極める能力、リスク管理、総じて実力不足を突き付けられる今回の結果に今でも悔しさが込み上げてきます。
クライミングはネガティブな面を持つものだと思っています。なぜなら、出来るより出来ない時間の方が長いからです。苦しい時間をどう乗り越えるか、どれだけしつこくしがみつくか。効率とはかけ離れたものですがそこにロマンを感じます。
登りには不満足ですが、家庭の温かみに触れながら過ごした時間は息抜きではなく、挑戦を続けるための力を与えてくれるものでした。梅津さんとそのご家族に、改めて心からの感謝を込めて、旅の記録を終わります。