S:それでは今回は、クライマーとしてのりょうくんをゲストにお迎えしています。
S:周りの方々から、「一年で一番強いのはこの時期」と言われていますよね。とても忙しい時期なのに。
R:僕自身もそういう認識です。
S:その理由は何でしょう?
R:やっぱり試登ですね。
R:課題の修正もありますし、通しで登った時の様子も確認するので、とにかく登る量が増えます。もう、登りまくりです。
S:高難度の段課題も登るんですか?
R:登りますね。特に二段や三段あたりは自分の限界に近いので、もはやトレーニング感覚です。
S:最難関の四段は?
R:これは難しすぎて、惜しいところまでもいかないので、逆にあまり疲れません(笑)。そこはもう、作ったセッターさん、今回は今泉くんにさじ加減を任せています。
S:セット期間中、加藤さんから「りょうくんはクライマーではなく、クライミング愛好家だ」といじられたそうですね。
R:そうなんですよ(笑)。でも、かなり的を射ているなと思いました。
S:りょうくんの考える「クライマー」とは、どんな人ですか?
R:自分の登りを追い求めるエゴイストですね。
S:では、ご自身は違うと。
R:そうですね。
R:岩場で登りたい課題もありますし、理想のトレーニング時間もあります。でも、それが最優先ではありません。
R:レッスンも、セットも、プライベートで遊ぶことも、僕にとっては同じくらい大切です。自分のクライミングだけに全部BETするような意識は、微塵もないですね。
S:「クライマー」と「クライミング愛好家」の違いを一言で言うと?
R:クライマーは登ることが中心にある人。僕は、クライミングのある生活そのものが好きな人、という感じです。
S:日々クライミングのある生活を送り、その中で強くなることが理想なんでしょうか。
R:ああ、そんな感じですね。かなり贅沢な考え方だとは自覚しています。
S:ジムスタッフ編でも「余裕」という言葉が出ていましたが、登りにおいても意識していますか?
R:意識しています。
S:肉体的な余裕ですか?それとも精神的な余裕ですか?
R:両方です。付け加えていいなら、指皮的な余裕も入れたいです(笑)。
S:全部聞きたいところですが、今回は精神面について。何をもって「余裕がある」と考えていますか?
R:自分の登りを内省して、フィードバックできる状態ですね。
S:自分を客観視できるということですか。
R:そうです。ただ、自分の限界に近いグレードでは、それはなかなか難しいです。
R:だからまずは、自分が登れる課題で「何が良かったか」「もっと楽に登れる方法はないか」を見つけられるようになることが大切だと思っています。
S:登りの土台を作るわけですね。
R:そうです。そのベースを深めた上で、本当にしんどい場面で根性を出す。
R:僕は根性がないので(笑)、代わりに余裕のベースを深くして、皆さんと同じように緩急やメリハリを付けた登りができるようにしています。
S:かなり考えて登っているんですね。
R:頑張れないだけです。自己努力値みたいなものが測れたら、きっと低いと思います(笑)。
S:その考え方は、今のクライミングの目標にもつながっていますか?
R:つながっていますね。
R:最近は、良く言えば利他的、悪く言えば人任せな理由で行動を決めることが多いです。
S:誰かのために登っている、ということですか?
R:おこがましい表現ですが、そうです。
R:セットや試登は、その課題を楽しんでもらうため。レッスンは、より良い手本を見せるため。自分の成果だけのためではなくなりました。
S:でも、ここ数年は岩場でも成果を出していますよね。
R:三段や四段も、お客様やスタッフから「りょうくんなら登れると思う」「登ってほしい」と勧められた課題でしたね。
S:では、五段を勧められたら?
R:いけちゃうかもしれませんね(笑)。
S:五段そのものが目標ではない?
R:そうですね。
R:僕は「五段を登りたい」というより、「五段を登りたいと思った時に挑戦できる能力」を持ってはいたいんです。
R:海外へ行きたいなら語学、会社を作りたいなら資金調達能力。クライミングなら登攀能力。
R:「この課題を登りたい」と思った時に、挑戦するためのチケットだけは持っていたいですね。
S:いつ必要になるか分からないものを準備するのは、少し億劫にも感じます。
R:確かに。でも僕にとって登攀能力は、必ず持っておきたい能力です。
R:仮に五段への欲望がなくても、その能力がセットやレッスンを通して、誰かの役に立つことは間違いありません。
。
S:結局、やる気はあるんじゃないですか(笑)。
R:そうなんですかね。
R:自分らしく、マイペースに。クライミング愛好家らしく、「好き」を大切にできる速度で成長し続けられたらと思っています。
S:そうしたら、いつか。
R:クライマーになれるかもしれません。